■退去前清掃の必要性

基本的に、退去前の清掃は必要と考えておきましょう。「もう自分が住まない部屋だから…」と清掃せずに出ようとする人もいますが、そうすると「敷金」が返ってこない場合があります。

敷金とは、家や部屋を借りる際に、借主が家主に預けておく保証金のこと。部屋が汚れていた場合などは、その修繕費用がここから差し引かれます。一方、キレイに使われていて、借りたときのままの状態を保っていれば、敷金は返還されます。

日常生活をしている上で、まったく部屋を傷付けないというのは思った以上に難しく、さすがに100%の返還は難しいのですが、それでもできるだけキレイにしておけば、敷金のうち何割かの返還が期待できます。

た だでさえ引越しには費用が掛かりますから、少しでもお金が返ってくればうれしいものですよね。そこで、退去前、荷物の搬出後には必ず清掃をした後に大家さ んに部屋を見てもらいましょう。簡単に雑巾がけや掃除機をかけておくだけでも、与える印象は大分変わりますし、窓や壁紙などを吹いておくとより敷金が返っ てきやすくなります。

■「ハウスクリーニング特約」とは？ 

退去前に部屋を清掃しておくべきなのはなぜか、確認しておきましょう。賃貸契約には通常、「原状回復義務」というものが規定されています。これは部屋を退去する際「現状に回復して」明け渡すという義務です。

これにプラスして、「ハウスクリーニング特約」。賃貸契約書に含まれていることが多いのですが、ここには「退去時の清掃費用は借主が持つ」という旨の文章が書きこまれています。

この特約が書いてあって、なおかつ以下の要件を満たすような場合には、原状回復以上の清掃費用も必要になってきます。

・清掃の必要があると判断されること。それにかかる費用が暴利的でないこと。

・借りた人が、このハウスクリーニング特約によって原状回復義務を超えた義務を負うことを認識していること。

・借りた人が、この義務負担について合意していること。

ただ、この「ハウスクリーニング特約」の有効性をめぐってはいろいろと議論があり、なかにはトラブルになって裁判で争うようなことも。

いずれにしても、借主に原状回復義務があるということは確かですし、無用なトラブルを避けるためには退去前の簡単な清掃はやっておいたほうが良いでしょう。

■原状回復義務。通常使用の範囲とは？

原状回復義務が賃貸契約に規定されている場合、借りた側が原状＝借りた時の状態への回復義務を負います。でも、原状回復って、いったいどこまで回復すればよいのでしょうか？

ガイドラインを見てみると「通常の住まい方で発生するものは、貸した側が負担」となっています。通常の住まい方で発生するものとは、家具の設置による床のへこみや、冷蔵庫の後部壁面の黒ずみ、機器の寿命による故障などです。

一方、借りた側が負担しなければならないものとしては、手入れを怠ったものや、使い方を間違ったもの、不注意によるもの、通常の使用とはいえないものがあります。

例えば、飲みこぼしの放置によるカーペットの色落ちや、たばこのヤニでクロスが変色しているというケース、またふろやトイレの水垢・カビなども借りた側が負担しなければならないとされています。

判断に迷うこともありますので、「詳しく知りたい！」という方は国交省のガイドラインを見てみましょう。

■退去前の清掃方法（窓ガラス、壁紙、フローリング、等）

では最後に、「これだけやっておけば、明け渡し後もトラブルなく安心」となる退去前の清掃方法を紹介しておきます。

まず、窓ガラスですが、外側は雨やほこり、砂など、内側はカビや手の油などの汚れが付着していることが多いです。ここは、梱包した際に余った新聞紙を使いましょうクシャッと丸めてから水に湿らせて窓ガラスを吹いていき、汚れが取れたら乾いた新聞紙で吹き上げます。

スクイジー(T字のゴム)は100円ショップなど購入できますし、あると便利。それでも落ちないカビなどには塩素系のカビ取り剤などを使用していきましょう。

壁紙も清掃しておきたい場所のひとつ。壁紙は非常にデリケートなので、ゴシゴシと力強く拭いていくのは厳禁。ここは専用品に頼りましょう。ホームセンターなどでは住宅用の洗剤が売られていますので、事前に購入しておくと作業が格段に楽になります。

少しでも節約したいという方は100円ショップで購入できるクリームクレンザーを使ってみるという手も。ただ、素材によっては合わない場合もあるので、要注意。シミになるなど、かえってマイナスになってしまう可能性もあります。

最後にフローリングですが、台所用などに使われている中性洗剤を使います。よく湿らせた雑巾に中性洗剤をしみこませ、拭いたらしばらく放置。そのあとで、絞った雑巾で拭き上げていけば、かなりキレイになっていることでしょう。